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払いすぎた所得税を戻してもらう

給与所得者の楽しみ?…年末調整

「大晦日払い」という商習慣もさすがになくなり、通常のビジネス人には「師走」といえども他の月とさほどは変わらない時代になりました。

しかし、給与計算担当者さんにとっては、やはり12月は総まとめの時期。本年度分の清算と来年度の準備などを、限られた期間の中ですべて行う必要があります。しかも、社員各人からの申告書・証明書等の提出が不可欠ですから、毎年のことながら大忙し。漏れのないよう、間違いのないよう、必要な書類は早めに揃えてもらうように事前に社員各人にPRしておくことが大切です。

会社の状況によっても違いますが、だいたい12月はじめくらいまでにはすべて揃うように準備しましょう。

年末調整が必要となる理由

<源泉徴収>

給与所得者の場合、毎月の給料や定期的な賞与から所得税が源泉徴収されます。この税額は 「給与所得者の源泉徴収税額表 」という早見表から、扶養親族の人数などを考慮した概算値です。会社は、この所得税を国に代わって徴収し、定期的に納付するよう義務づけられています。

<給与所得と課税所得>

給与所得の金額は、その年中の収入金額(給与・賞与)から給与所得控除額を控除した金額となります。この給与所得控除額とは、サラリーマンの必要経費として年収額に応じて定められている金額です。

この給与所得からさらに所得控除を引いたものが課税所得とよばれ、税率をかける基礎となるものです。課税所得に税率をかけて年税額が決定します。このように計算された年税額と月々の源泉徴収税額との差を調整するのが年末調整です。

「年収額に応じたサラリーマンの必要経費」
年収 給与所得控除額
162万5000円以下 65万円
162万5000円超〜180万円以下 年収×40%
180万円超〜360万円以下 年収×30% + 18万円
360万円超〜660万円以下 年収×20% + 54万円
660万円超〜1000万円以下 年収×10% + 120万円
1000万円超 年収×5% + 170万円

<追加徴収もある、年末調整>

一年間の給与が決まったら給与所得控除額を控除し給与所得が計算されます。

所得税は、その年の12月31日の現況により計算しますが、年の途中で子供が生まれたり、新たに保険に入ったりなどするため、どうしても月々の源泉税と年税額とに差が生じてしまいます。この差を調整し適正な税額を計算した上で、多く預かり過ぎている場合には本人に還付し、少ないときは給与の支払い時に不足額が徴収されます。年末調整によりサラリーマンの課税関係は完結しますので、確定申告する必要はなくなります。

社員各人に出してもらう書類

年末調整の計算にあたっては、次の書類や証明書が必要となります。控除を受ける(所得税を低くする)ためにはぜひ必要ですから、早めに揃えてもらうよう社員にPRすることが大切です。なお、医療費控除、雑損控除、寄付金控除については、確定申告が必要です。

  1. 扶養家族の氏名・生年月日 【扶養控除等申告書に記入】
    (※扶養家族の方にも本年給与やアルバイト収入がある場合には、所得金額もあわせて確認します。)
  2. 生命保険の控除証明書 【保険料控除申告書に記入および証明書の添付】
  3. 損害保険、火災保険の控除証明書 【保険料控除申告書に記入および証明書の添付】
  4. 国民健康保険、国民年金保険料の金額 【保険料控除申告書に記入】
    (※本年中に支払った金額、または通帳から引き落とされた金額を確認します。)
  5. 小規模企業共済や心身障害者扶養共済制度の掛金額 【保険料控除申告書に記入および証明書の添付】
  6. 住宅借入金等特別控除の明細書 【住宅借入金等特別控除申告書に記入および証明書等の添付】
    (※税務署から送付された証明書および国民金融公庫や銀行からの借入金残高証明書が必要です。なお、年末調整でこの規定の適用を受けられるのは、適用年度が2年目以降の方です。今年始めて適用を受ける場合には、確定申告が必要です。)
  7. 中途入社の社員や従業員については、前の会社の源泉徴収票

年末調整のための申告書

社員各人に記入・提出してもらった書類をもとに各控除申告書を整理する必要があります。年末調整に必要な税額表や一定の用紙などは税務署等で入手できます。

1. 給与所得者の扶養控除等申告書
所得控除の対象となる扶養親族や配偶者の状況については、扶養控除等申告書により確認します。この申告書は、その年のはじめに会社に提出することになっていますが、子供が生まれたりしてその年中に状況が変わっている場合がありますので、少なくとも年末には再確認が必要です。なお、提出し忘れている者がいる場合には、すぐに提出してもらいます。
2. 給与所得者の保険料控除申告書
この申告書で、保険料控除の計算の基礎となる給与等から天引きされる以外の社会保険料、生命保険料、損害保険料、小規模企業共済等掛金を確認します。
3. 配偶者特別控除申告書
配偶者のパート収入などが141万円未満である場合には、この適用が受けられます。なお、配偶者の12月のパート収入がまだ出ていない場合でも見積り額を含めて計算します。ただし、本人の所得金額が1千万円を超える場合には、この適用は受けられません。
4. 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
税務署から送付された証明書と借入金の残高証明証を添付して提出してもらいます。はじめて、この適用を受ける場合には、確定申告が必要です。
(住宅借入金等特別控除の計算の留意点)
住宅借入金等特別控除の計算は、いつからこの適用を受けているのかによって控除額の計算が違ってきます。適用を始めて受けた年度を確認した上で控除額を計算しましょう。

年末調整のしかた

源泉徴収簿の作成と年税額の計算

  1. 必要な書類が揃ったら、源泉徴収簿に毎月の給与、給与から天引きした社会保険料、算出税額を記入します。
    (※前職者の給与や季節ごとの賞与は忘れがちなので、記入漏れがないようご注意ください。)
  2. 1年間の給与が決まったら、早見表により給与所得控除後の金額を求めます。次に給与天引きの社会保険料、保険料控除申告書、配偶者特別控除申告書、扶養控除等申告書に基づいて各種の所得控除の金額を求め、源泉徴収簿に転記します。
    (※基礎控除額の38万円を加算し忘れないように。また、提出された各申告書の内容や計算に間違いがないかどうか必ずチェックしてください。)
  3. 給与所得控除後の金額から所得控除額の合計額を控除します。
    この金額が課税所得金額で、この金額に税率を掛けて1年間の税額を算出します。
  4. さらに、住宅借入金等特別控除がある場合には、明細書で計算した控除額を控除し、年末調整定率控除額(住宅借入金等特別控除を控除した税額の20%相当額。ただし25万円を限度)を控除し、年税額が確定します。

過納額の還付と不足額の徴収

過納額の還付 :
年末調整によって計算した年税額よりも預かっていた源泉徴収税額が多い場合には、12月の給与の支払い時に、その過納額を本人に還付します。
不足額の徴収 :
年末調整によって不足額が生じたときは、12月の給与の支払い時に、その不足額を徴収します。
税務署長からの還付

以下の場合には、給与等の支払者にかわって税務署長から過納額の還付を受けることができます。

  • 廃業などにより過納額の還付ができなくなった場合
  • 納付すべき税額がなくなったために、過納額の還付ができなくなった場合
  • 納付すべき税額に比べ過納額が多額であるため、還付することとなった月の翌月から2ヶ月を経過しても還付しきれないと見込まれる場合

税務署長からの還付を受ける場合には、「年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を作成し、これに各人別の源泉徴収簿の写し及び過納額の請求及び受領に関する委任状を添付して税務署長に提出する必要があります。

徴収税額の納付

預かった徴収税額は、翌年の1月10日(一定の届出書を提出している場合には、翌年の1月20日)までに、所定の納付書を使って国に納付しなければなりません。特例の適用を受けている場合には、7月から12月までの徴収税額を納めることになりますが、還付が多額のため納付税額が0となる場合であっても、納付書は0金額で税務署に直接提出または郵送します。

納期の特例の承認に関する申請書

給与等の支払を受ける者が10人未満の事業者については、納税地の所轄税務署長に一定の申請書(源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書)を提出し、承認を受けた場合には、1月から6月までの期間の徴収税額については7月10日まで、7月から12月までの期間の徴収税額については翌年1月10日(その年12月20日までに一定の届出書を提出したときは、翌年1月20日)までに納付することができます。

源泉徴収票の交付

年末調整が終わったら、各人の源泉徴収票を作成します。通常、役員の場合には4枚、社員の場合には3枚作成します。1枚は本人に交付し、2枚は市区町村に提出します。一定の役員等(その年中の給与等の金額が150万円を越える役員及び500万円を超える社員)については、源泉徴収票1枚を所轄税務署に送付します。

法定調書合計表の作成と提出

毎年1月31日までに給与等の支払い金額等を記載した法定調書合計表を所轄税務署に提出します。この場合、一定の役員等については、源泉徴収票を添付します。年末調整とは直接関係ありませんが、報酬料金や家賃を支払っている場合には、報酬料金等の金額等を法定調書の所定の欄に記入し、支払調書を添付します。

給与支払報告書の作成と提出

毎年1月31日までに市区町村に対して、一定の事項を記入した給与支払報告書(源泉徴収票と同じ書式です)を提出しなければなりません。給与支払報告書は、各人2枚づつ、各市区町村ごとにまとめて、一定の事項を記載した総括表(表紙)に添付し、送付します。この給与支払報告書は、各人の住民税などの計算の基礎となるものです。

お疲れさまです、2ヶ月間の年末調整。

年末調整のスケジュールは、2ヶ月間のロングラン。事前に準備しておけば、間違うことなくスムーズに進められます。

11月 下旬
必要書類の準備

12月 上旬
社員へのPR各申告書の配布

中旬
源泉徴収簿の作成、必要書類の回収とチェック

下旬
年末調整計算、給与の支払い

翌 年

1月 10日期限
徴収税額の納付

20日期限
徴収税額の納付(特例)

31日期限
源泉徴収票の交付、法定調書合計表の提出(税務署)、給与支払報告書の提出(市区町村)、本年分扶養控除等申告書の作成※
(※給与所得者の扶養控除等申告書は、その年最初に給与等を支払いをする日の前日までに社員各人から提出してもらいます。)

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